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 去年の十二月の三十一日の真夜中の事でした。一匹の猪と一匹の犬がある都の寒い寒い風の吹く四辻でヒョッコリと出会いました。
「ヤア犬さん、もう帰るのかね」
「ヤア猪さん、もう来たのかね」
 と二人は握手しました。
「もうじき来年になるのだが、それまでにはまだ時間があるから、そこらでお別れに御馳走を食べようじゃないか」
「それはいいね」
 二人はそこらの御飯屋へ行って、御飯を食べ始めました。
「時に犬さん、お前の持っているその大きな荷物は何だね」
 と猪は小さな眼をキョロキョロさせて尋ねました。
「これは犬の年の子供がした、いい事と悪い事を集めたものさ」

 むかしある国に独り者の王様がありました。家来がどんなにおすすめしてもお妃をお迎えにならず、お子様もない代りに一匹の犬を育てて毎晩可愛がって、「息子よ息子よ」とよんで、毎日この犬を連れては山を歩くのを何よりの楽しみにしておいでになりました。
 そのうちに王様はちょっとした病気で亡くなられましたが、その御遺言には「俺が死んだら息子を王様とせよ。そうしたら俺が妃を迎えなかったわけがわかるであろう」との事でした。この国の家来は皆忠義者ばかりでしたから、変な事とは思いましたが、とうとう王様の「息子」の犬を王様にきめて、いろいろの政は今までの総理大臣がする事になりました。国中の人間はこのお布告を見ると大騒ぎをして、お祝いの支度を始めました。
 その犬は狸のようなつまらない汚い犬でしたが、いよいよお祝いの当日になりますと、金襴の着物を着て王様のお椅子に着いて、大勢の家来や人民にお目見得をさせる事になりました。

 五郎君はお菓子が好きでしようがありませんでした。御飯も何もたべずにお菓子ばかりたべているので、お父様やお母様は大層心配をして、どうかしてお菓子を食べさせぬようにしたいというので、ある日、家中にお菓子を一つも無いようにして、砂糖までもどこかへ隠して、いくら五郎さんが泣いてもお菓子を遣らない事にしました。
 五郎さんは死ぬ程泣いてお菓子を欲しがりましたが、お父様もお母様も只お叱りになるばかり……とうとう五郎さんはすっかり怒って、御飯もたべずに寝てしまいました。
 翌る日、学校はお休みでしたが、五郎さんは矢張り怒って、朝御飯になっても起きずに寝ておりました。
 お父様もお母様も懲しめのためにわざと御飯を片づけてしまって、お父様はどこかへ御用足しにお出かけになり、お母さんも一寸買物にお出かけになりました。
 あとにたった一人、五郎さんは、
「ああお腹が空いた。お菓子が欲しいなあ」
 と思いながら、涙をこぼしてジッと寝ておりました。